初生衣神社(うぶぎぬじんじゃ)訪問記2002年9月29日
静岡県三ヶ日町の初生衣(うぶぎぬ)神社に行って来ました。
織物に携わっている人必拝の神社です。
天竜浜名湖鉄道 三ヶ日駅から数分の所です。
鳥居の注連縄が落ちていたので直しました。御利益あるかな?
神社旧記によればこの織殿も毎年新しいものに作り替えるしきたりがあったそうだが、その後取りやめになり、現在のものは1801年の建造であるという。 毎年4月13日に行われる「おんぞ祭」は、もともとは毎年祭主となる夫婦が斎戒沐浴のうえ三河の生糸を織って伊勢神宮に奉納していたことから始まる。江戸時代までは絹布を運ぶ行列は伊勢神宮御用の意味の「太一御用」ののぼりを立てて三河の国吉田(豊橋)に至り、そこから船で伊勢まで行った。
残念ながら機に糸は掛かっていなかった。左に木枠。
機は真っ黒に汚れていたが、近年近くのデパートでシルクロード展示会があった際、貸し出しをした折りきれいに磨いたそうだ。
織り殿の中には古式の機がありました。特別写真を撮らせていただきました。
言い伝えでは昔、神服部の夫婦が斎戒沐浴をし、神社境内に注連縄を張り巡らせ、織殿にこもり、機を織ったそうだ。境内の参道は昔苔が敷き詰めてあってそこで整経をしたと伺った。
普段はその苔の参道は履き物を脱いで通ったとのこと。注連縄をくぐって機殿を覗いた輩がめくらになったとの言い伝えがあるほど、この機織りは秘められたものであったそうだ。
「史跡 織殿
往古「加止利」ト称スル「シドリ」ヲ織リテ伊勢神宮ニ納メタコトガアッタガ、後年ハ生糸ヲ三河国大野ニ取リ神衣料荒妙(絹)を織リテ之ヲ献ズル例トナッタ云々。」
荒妙(あらたへ)は麻、和妙(にぎたへ)は絹と聞いていたが、ここでは「荒妙の絹」と称している。
神服部さんによればこれは粗く織った絹のことだという。
「加止利」(かとり)は神社略記によれば「固織りの儀」と称する絹。
元は藁葺き。中から天井を見ると竹で小屋組をしていた。すごい!!
神服部家は800年44代もの長い間宮司としてこの神社守っているという。この家は一子相伝で、一人しか神服部を名乗ることができないと言う。
元をたどれば建羽槌神の神孫、神代以来天照大神御初生衣調進の職をえたそうだ。
ほとんど同じ機である。
この機は川島織物の博物館に所蔵してある。
この機を参考にして再度「御衣」を作ってもらい、伊勢神宮に奉納してもらいたいものである。神御衣(かんみそ)祭を復活して欲しいものである。
浜名総社
初生衣神社の近くには浜名総社がある。祭神は天照皇大神(あまてらすおおみかみ)
垂仁天皇から天照皇大神の御霊をお納めする地を捜すようにとの命を受けた皇女倭姫(やまとひめ)が各地を流浪したすえ、三ヶ日のこの地にきて40日滞在、そこで「伊勢へ」との神託を授かったと伝えられている。
後ろの社は天棚機姫の祭宮。
資料:初生衣神社略記
静岡の文化53号「初生衣神社と浜名総社」1998
神服部さんからの取材
松坂もめん覚え書き 田畑美穂 中日新聞本社刊
織機と裂地の歴史 川島織物文化館刊