葛について

夏から初秋に咲く葛の花

葛は日本全土に自生する蔓性、豆科の植物で林の境、河川の土手や線路脇などに多く見られます。
 春先に新芽を伸ばし、夏の間すさまじい勢いで繁茂します。日本テレビの「所さんの目が点」での実験では一日28cm伸びましたし、最盛期では50cmちかくも伸びるそうです。
根は極めて強く、深く伸びるので土手の土留めに使用されました。
ここから澱粉をとりだしたのが葛粉。葛餅や葛のあんかけなど和菓子や割烹料理の材料に成ります。また根を乾燥すると漢方薬の葛根湯。風邪のときの解熱剤ですね。
 初秋に藤に似た赤紫の花をつけます。この花は秋の七草の一つとして有名です。
藤と違って上に伸びるので「上り藤」とも言われています。花の甘い香りはむせ返るほどです。
 葉は澱粉質を多く含み、家畜の餌として最適です。地方によっては葛を「豚蔓」とか
「馬のぼた餅」とか呼んでいますが、馬や豚が喜んで食べたのでしょう。
蔓は編んで篭、ロープ代わりに使われました。衣装を入れるつづらは「葛籠」と書きますし、かずら橋のかずらは「葛」と充てます。
 秋の七草、蔓性植物と書きましたが、実は葛はれっきとした「木」。
多年生で年々幹が太くなるので植物学的には「木」なんだそうです。
他の木と違う点は、他の植物に巻き付くことで、自分を支える木質部を形成しなくて済むこと。その分の栄養を生長に向けることであのように 驚異的な繁茂をするのです。
 頭がよいのか、ずる賢いのか・・・・
 繁殖は二つの方法で行います。一つは地面に這った蔓の節から根を張って行います。
だから、葛を刈り取っても放置するとすぐに根が張るのです。
もう一つは 花の後に出きる種。豆科の植物なので 鞘ができその中に種があります。
従来、種の発芽率が悪いので、種ではあまり繁殖しないとされていましたが、さにあらず。鞘の中には二種類の種があって、一つはすぐ発芽。もう一つは すぐに発芽せず、数年から十数年経て、何かのショックで発芽するそうです。すごいと思いません?


 この葛の蔓から繊維を取り出し、撚りをかけずに緯糸にし、経糸に綿、絹、麻などを用い、織りあげたのが葛布です。

注1 葛

葛 くず
Pueraria Thunbergiana Benth
各地の山野に普通に生える大型で丈夫な多年生のつる状草本。
茎の基部は木質になる。全株に褐色のあらい毛があり、茎はつる状に非常に長く伸びて10cm以上になることもある。
葉は大きく、互生して長い葉柄のある3出複葉で、頂小葉はほぼ円形、または横に長い広楕円形、側小葉は歪んだ円形、または歪んだ楕円形で、主脈より下側の葉身の方が大きい。小葉の長さは17cmぐらいになり、先端は急に細くなって、短くとがり、基部は鈍形、または広いくさび形でごく短い柄があり。全縁、またはしばしば浅く3裂し、時には波状縁となる。葉質は厚く、上面は緑色で荒い伏毛がまばらにあり、下面は白色を帯、白色の毛をやや密生する。
 秋に葉脈から15〜18cmの総状花序を立て、紫赤色の蝶形花を密集してつけ、下方のものから順に開花する。花は長さ18〜20mm、旗弁は色が薄く、翼弁が濃い。ガクは薄紫色、ガク裂片の長さはガク筒の1.5〜2倍下側の裂片が長い。雄しべは10。下部は癒着して一体となる。
 豆果は長さ5〜10cmの線形。褐色の荒い開出毛でおおわれる。根は肥大して薬用となり、また葛粉を作る。葉は牛馬の飼料となる。「日本名」クズはクズガカズラの省略であるといる。一説にはクズは大和の国栖であり、昔国栖の人が葛粉を作って売りにきたので、自然にクズと言うようになったと言われる。
 
「牧野新日本植物図鑑 牧野富太郎:著 北隆館 昭和36年6月25日発行 p323」

注2 秋の七草

秋の七草
「秋の野に 咲きたる花を 指折り(およびおり) かき数うれば 七種(ななくさ)の花 萩の花 尾花葛花 撫子の花 女郎花(おみなえし) また藤袴 朝顔の花」
(山上憶良 やまのうえのおくら、万葉集) 秋の七草は万葉集のこの歌で山上憶良が選定し、 今に至っている。

葛の種類

東アジアの主な葛の種類
◆Pueraria thomaonii 甘葛藤  華南 越南 インドなど
◆Pueraria montana  越南葛藤  広東 広西 福建 台湾 越南
 これは熱帯葛とか台湾国葛とか言われている。
中国高等植物図鑑より

沖縄の葛

沖縄の葛 2005年

2005年10月沖縄本島に展示会で行ったおり、沖縄の人が葛を持ってきてくれた。明らかに本土の葛とはちがう。台湾葛l montana と思われる。本土の葛Labotaに比べると花柄がとても長く、葉は小さい。

 

花柄がとても長い 2005年沖縄本島

2007年10月にも沖縄本島 北中城村で周辺を歩いてみたが、小さな台湾葛の群生は発見したが labotaはみる事ができなかった。
また、本土の場合と違い、圧倒的な繁殖力を発揮していないようだ。

アメリカ合衆国の葛

http://en.wikipedia.org/wiki/Kudzu
1876年(明治9年)建国百年を記念してフィラデルフィアで万博。
日本から葛が出品された。
1885年観賞用 飼料用として葛がアメリカで導入された
「北アメリカにも1876年にフィラデルフィアの独立百年祭博覧会の際に日本から運ばれて飼料作物および庭園装飾用として展示されたのがきっかけとして、東屋やポーチの飾り、さらには緑化・土壌流失防止用として推奨され一時は持てはやされたが、原産地の中国や日本以上に北アメリカの南部は生育に適していたため、あるいは天敵の欠如から想像以上の繁茂・拡散をとげ、有害植物及びに侵略的外来種として指定されたが、駆除ははかどっていない。なお、葛の英語名は日本語から「クズ[kudzu]」である。近年ではアメリカ南部の象徴的存在にまでなっている。」ウィキより
 
1920年 世界恐慌の際 農家は荒れ地、干ばつでも耐える葛を採用。テネシー河渓谷開発公社が土留めに葛を使う。 1ha16ドルの補助金もでた。

http://www.yahoolavista.com/kudzu/


ジョージア州アトランタに クズクラブができる 
1950年代侵略的植物として 害草になる
■「現在アメリカ合衆国の3億ヘクタールが葛で覆われている。  自生している植物を排除、土地の価値を下げている。 害草として国、州の両方から根絶するための 有毒な除草剤の使用を検討している。
しかし除草剤のしようは環境のためされてはならない事です。そこで葛を利用可能な資源として使いたい」
ノースカロライナ州立大学 紅子武田チャペル から大井川葛布への書簡の一部 2006年1月

葛の生長と繁殖

■栄養繁殖
葛の実生は定着しても 数年間は花をつけず、種子生産を行わないが、栄養体による繁殖はその年から始まる。
接地した茎の節は容易に根を生じる。 発根した節は両側の茎が枯死するか、枯れるかすると個体として独立

■種による繁殖

冬の葛の種子 大井川にて

発芽しやすい種子 と硬実種子 
実生による定着率は良くない。  新天地への開拓、危険分散
■葉の調位運動
 光合成の最適化 水分蒸発を押さえる 密集した群落にも透過光の増大を計る
■木質部をなくした生長形態
くずは自らの身体をささえるほど十分な茎が発達していないため、他の植物に巻き付き、茎葉を群落上部に集中する
自らの支持組織へのどうか産物を減らせるので その分 生長 葉を大きくしたり 茎を伸ばしたりすることに栄養を使える。
一日平均18cm 最大50cm 日本テレビ28cm」
■巨大根群の利点
 葛では 光合成にための水分損失率は高い  が栄養貯蔵に富む根群をもっているので、乾燥地帯でも生育が可能になる